凛として時雨 "still a Sigure virgin?" 全曲レビュー

1ヶ月くらい前に某動画サイトでI was musicの一部ライブ映像を見てからこの予感はあったわけですが、今作の時雨はマジでいいですね。純度100%の凛として時雨としてあった#4とはそれこそラーメンと焼き肉の如く別物なので比較はできませんが、前作より確実に洗練されたこのアルバムは家宝となりそうです。僕は現在カリフォルニアに住んでまして、In-n-outというアメリカに存在する中で唯一美味しい食べ物を提供してくれるハンバーガ屋に今日行ってきたのですが、車から降りるときに、「時雨のCD置いていって大丈夫かな、盗まれないかな」と心配になりました。でも周りの人にとってはいくら円高と言えどたかが3000円前後なわけで、この時ほど一般的な価値と自分にとっての価値の差を意識した瞬間はここのところなかったと思います。

今回の記事の目的は、「時雨の聴き方」みたいなものの一例を提供することにあります。
時雨といえば演奏が上手なバンド、みたいな評価軸もあるようですが、僕は時雨というジャンルを演奏能力という割とどうでもいい(他のバンドで代替可能な)基準で語ることをもったいないと思っている人なのでその点をご了承ください。あの大人しそうであまり目立たなそうな2人が、たどたどしいMCを挟みながらも叫ぶようにして歌っている、そんなコンテキストも噛み砕いた上で聴きたい、僕にとってそんなバンドです。
なお、時雨って何?ってレベルの人には以前書いたこちらの記事をオススメします。

全曲を★5点満点で採点していってみようと思いますが、僕は基本的にわかりやすいメロディが好きだし、その上で切なくアレンジされたような楽曲が高得点を獲得しやすい傾向があります。なんていうか、時雨というイデアが持つ激情と悲しさがどれだけ僕に伝わり、酔えたかが得点になります。自分でも何言ってるかよくわかりませんが、直観的にいきます。では始めよう。

1.I was music ★★★★☆

"I was music"と呟いてからの"I was music!!!"でバッキングのリフへと繋がるオープニングにふさわしい曲。実はこの部分だけ事前にライブ映像で見ていて、おいおいこの曲どんだけかっこいいんだよとハードルMAXになっていただけに、「いいよおかしくなって」の連呼で少し肩すかしをくらった感は否めませんでした。とはいえ、サビの345との掛け合いといい時雨らしさは満点の楽曲なので、タイトル通り「時雨処女」の人にとっても導入としてわかりやすいし良かったんじゃないかと思っています。この曲はライブバージョンの方がかっこいいんじゃないかという気もしてるので、動画サイトオススメ。

2.シークレットG ★★★★★

時雨の曲というのは、よくある「Aメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ、サビ、ブリッジ、サビ」みたいな構成を踏まえないことが多く、「長いAメロ、長いBメロ、サビ」みたいに何部構成かになっているような曲が割とあるのですが、この曲やThis is is this?もそのタイプの曲にあたります。前作のmid126などではサビの盛り上がりまでがじれったく感じることもあったのですが、この曲はAメロがとてもメロディアスで、激しいリフとのギャップがたまらなく素敵です。でも俺が声を大にして言っておきたいのは、一番の見せ場はギターリフではなく、TKのシャウトでもなく、345のハモリなんだよ!!!ということです。いや全部かっこいいけど、345ファンとしてこれだけは言っておきたかった。シャウト後の絞り出すような2人のヴォーカルが切なすぎて、もうね。

3.シャンディ ★★★☆☆

これも実は動画サイトで一瞬だけ視聴していて、発売されるのを一番楽しみにまっていた曲。TKはギタリストである前にエンジニアなので、こういう曲が増えてくるであろうことは前作を聴いたときから予想していたが、バンドサウンドとしての凛として時雨からは距離を置いた一曲。ピアノはいいとしても、この蟲の囁き声みたいな音や、中盤の電子音などの打ち込みは、かなりエレクトロニカ臭が強い。曲自体は悪くないし、延々と鳴り続けるピアノの音も実は好きなんだけど、似たフレーズのヴォーカルが続くのにちょっと飽きるかな。

4.this is is this? ★★★★☆

タイトルを聴いた時は、あまりのTKらしさに笑ってしまったが、何気に曲は割とシリアスな雰囲気で、後半の盛り上がりがかなり熱い。タッピングのソロはピッピッピッピっていう一弦14フレット?の音が心地良いですね。たぶん演奏難易度自体は普段歌いながらやってる高速アルペジオとかのほうが高いんじゃないかなって気もするけど。同じサビが繰り返されて、楽器が少しずつ重なっていき、345のコーラス、TKのシャウトと繋がる流れは大好き。4.5点くらいあげたい。TKのギターテクの高さは以前からわかりきったことだったけど、こういうベタな早弾き自体はあんまりなかったから、メタルリスナーなんかを取り込むきっかけにもなるんじゃないだろうかwあと、12弦ギターを使ってるらしいが俺はそうと聞くまでわからんかった。

5.a symmetry ★★★★☆

静と動のギャップは時雨の大きな持ち味の一つになってるけど、サビでの「また記憶のせいで 全てがreverseされて」のシャウトが「君は何が欲しい?」の前フリとして機能していて、静の部分がより美しく感じる。最後に345が囁く「まだ誰もいないのに」とキラキラギターも綺麗で大好き。至るところで使われる、一番最初のジャジャジャジャっていう音はちょっと重苦しく感じたかなー。

6.eF ★★★★★

ロキノンでTKが、「なんだかいろんな音を足して音像で誤魔化してしまっているような気がして、それならギター1本で弾き方ってみたら何ぼのもんじゃい!」と思って作ったとコメントしていたが、まさに1本のアコギで美しいヴォーカルラインを支えた名曲。俺は、この曲の詩を女の子ウケの良さそうなラブソングに変えて、さらに1オクターブ下げて(ここ重要)福山雅治に歌わせたら、オリコンシングル1位は余裕で記録すると思うんだ・・・・。何だか、他の時雨ファンは好きな人が少ないようで、それが不思議なくらいいい曲。サビの美メロは、何度聴いても飽きない。今日のドライブでも、曲が終わった瞬間に「あ、これもっかい聴こう」って戻るボタン押した回数は一番多かった。あとピ様がエレキ弾いてるらしいけど、音作りもフレーズ作りもTKらしいしまったく違和感ないというかわからんねw

7.Can you kill a secret? ★★☆☆☆

曲名が宇多田ヒカルをパロってるのは実は注目をそちらに誘導するための罠で、歌詞はそれ以上にハチャメチャ。最後の「I love UFO but kill you」は文法的には正しいかもしれないが、butの使い方を例文で示しなさいという英語のテストがあったとすれば不正解を与えざるを得ない。実は一枚のアルバムとして聴くことを考えた時に、トラック7,8は僕にとって鬼門で、早いリズムでかつ聴き心地が良いメロディではないので少し疲れてしまう。ちょっと聴きこみが足りない感もあるけど、今のところぱっとしないイメージ。

8.Replica ★★★☆☆

345のヴォーカルが目立つ曲で、なんとなく前作のハカイヨノユメを思い出した。ちょっとずれた音をヴォーカルでキャッチーに歌ってるところが似てるんだろうか。時雨らしい曲だと思うし、切迫感のある「飛び降りたら 誰も知らない 僕に良く似たレプリカだといいな」のフレーズも好きなんだけど、ハカイヨノユメがあまり好きじゃない僕はやはりそこまでハマれなかった。他の時雨ファンにはなんとなく人気ありそうな曲。

9.illusion is mine ★★★★★

俺的ベストトラック。公式で数日前くらいから視聴が始まった時は、Disco flight、24Reverse並みの美メロきたーーーーー!!!と一人で盛り上がったのを覚えてますが、illusion is mineを345が4回も繰り返して歌うので、ちょっと飽きそうな感がありました。でもこの曲は、2回目以降のサビの入り等が工夫されていて、飽きないどころか繰り返しもめちゃくちゃかっこいいんですよ。345の「奇跡的な何かを見た illision is mine」の後の唐突なギターといい、最後の転調といい最高です。ピ様の美メロを煽るような裏打ちのパターンは時雨ではもはや定番となってきたけど、転調部分のドラムもいいよなー。345の声マジ綺麗。奇跡的。人。夢。君。Dカップ。結婚してください。


以上、全曲レビューでした。完全に好みによって採点してるのでかなり意見の分かれるところだと思いますけど、何か語りたいことあったら気軽にtwitter hiroakit_rokoまで@ください。